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戦前には懲罰用病室重監房があり、患者 を裁判なしで療養所長の判断だけで収容。
同園では93人が送られ、23人が命を落とした。
戦後、重監房は廃止されたが、特別法廷という形で差別的な扱いは続いた。
藤田さんは新憲法が法の下の平等をうたっても人権無視は続いたと話す。
藤田さんが発症したのは旧陸軍の戦闘機整備兵だった1945年春。
軍医の診察後に伝染病棟の奥に隔離され、終戦直前の７月、病名を知らされぬまま除隊に。
うすうす病名を悟り死のうとしたが、出征前に母から犬死にするなと言われたことが脳裏に浮かび、思いとどまった。
療養所に移った際、ここでは本名を使わない。
園名を決めなさいと言われ、夏目漱石の小説から三四郎を名乗った。
１年後、園内で出会った女性との結婚を決めたが断種手術を強制 された。
同園では堕胎手術も26件はあったという。
藤田さんは療養所を訪れた中高生らにこうした歴史を伝承している。
交流を続ける人から届く年賀状は年約1000通。
結婚式へ招待してくれたり、赤ちゃんを連れて遊びに来たり。
みんなじいちゃんと慕ってくれる。
全国に１千人の孫、ひ孫がいると自室の壁一面に張られた"孫"たちの写真を誇らしげに見詰める。
96年のらい予防法廃止後、園名を捨て、本名に戻りたいと考えたこともあった。
だがまた差別を受けると恐れた郷里の妹から今のままでいてほしいと反対され、今も本名を名乗れずにいる。
藤田さんは障害、貧困などへの社会に残る差別問題に自身の経験を重ねる。
差別は誰の心にもある。
そう達観しつつ、それでも願う。
死ぬ時ぐらいは親が付けてくれた本名で呼ばれたい。
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